タンパク質ベースの治療薬およびワクチンによる医療の進歩
2024年4月1日 | 読取り時間: 5分
医薬品といえば、複雑な化学式を持つ、多くの薬棚に並ぶ鎮痛剤や高血圧の錠剤を思い浮かべるかもしれません。化学成分を含む医薬品は今でも一般的ですが、糖分やタンパク質、生きた細胞から作られる医薬品も増えています。これらのバイオ医薬品は生物学的製剤とも呼ばれ、有効な治療法がない病気にも処方できるもので、しかも従来の化学薬品ベースの薬よりも副作用が少ないことが多いのです。ソルベンタムがどのようにこのような治療の普及に貢献しているかをご覧ください。
バイオ医薬品精製チームの2人の専門家、研究科学者のジョナサン・ヘスター博士とアプリケーション・エンジニアのアレクセイ・ヴォロシンに、タンパク質ベースの治療薬やワ クチンなどのバイオ医薬品について詳しく説明していただきました。なぜ製造工程がこれほど重要なのでしょうか(ヒント:それは精製度に関係しています)、また私たちは、製薬 会社が画期的な新治療法で医療を前進させるためにどのようなサポートをしているのでしょうか。
生物学的製剤の説明
人類は長い間、症状を治療する薬の選択肢を模索してきました。ヒ素だって、かつては医療用に使われていました。しかし、医学が進歩するにつれて、これらの治療法の有効性と安全性への期待が高まりました。
アセトアミノフェンやイブプロフェンのような従来の治療法は、筋肉痛のような症状を治療するために使用される化学薬品ベースの薬の例です。これらは一般的に有効で すが、副作用を伴うことがよくあります。「身体にどのように影響するか正確には特定できませんが、イブプロフェンは胃の内壁などの組織に影響します」とアレクセイは言いま す。さらに話を聞くと、化学療法も従来の治療法のひとつで、がんは死滅するかもしれないが、体の他の部分もダメージを受ける可能性があると言います。
バイオ医薬品技術は、タンパク質、核酸、細胞など、より高度な分子を使用します。「力価、選択性、安全性のユニークな組み合わせにより、このクラスの薬剤は、癌、関節炎、 潰瘍性大腸炎などの重篤な疾患に効果的な治療法となります。」とアレクセイは述べます。バイオ医薬品技術によって、社会全体の生活の質に対する期待が根本的に変わり始めたので す。
Biopharmaceuticals are on the cutting edge of treating life-threatening and life-changing conditions with maximum efficacy and safety. And their story is just beginning.
Alexei Voloshin
おそらく皆さんがよくご存じの一例として、最新のバイオテクノロジーの産物であるCOVID-19ワクチンがあります。このアプローチによって、これらのワクチンの開発スピードを上げることができました。
タンパク質ベースの治療薬とワクチンの将来性
長年にわたり、ワクチンは不活化ウイルスを用いて開発されてきました。これらの弱毒化ウイルスを患者に投与すると、体内の免疫反応が刺激されて、将来そのウイルスに感染しても身を守ることができるのです。この方法は現在でもインフルエンザ、水疱瘡、麻疹、おたふく風邪に効果的に使われていますが、科学者が研究室でウイルスを増殖させる必要があるため、数か月かかることもあります。
近年、研究者たちは、ウイルスがヒトの細胞に付着して侵入するのを防ぐために、ソルベンタム技術を用いて精製されたと思われる精製タンパク質を使用したワクチンを開発しました。これらのワクチンは、生ウイルス使用に特有のリスクなしに、より迅速に開発することができます。タンパク質ベースのワクチンには、HPV、帯状疱疹、B型肝炎、COVID-19などがあります。
これらのタンパク質ベースの生物製剤は、病気の治療にも使用されます。「今、最も有望な治療薬の中に、タンパク質ベースの薬があります」とジョナサンは言います。「製薬会社は、細胞(通常は哺乳類の細胞)を遺伝子操作することによって、タンパク質の医薬品をを製造しています。」
彼の説明によると、遺伝子操作した細胞を数日から数週間培養します。その後、細胞が作ったタンパク質の薬剤を含む液体ができますが、その中には細胞、壊れた細胞の破片、細胞が作った他のあらゆる種類のタンパク質も含まれています。
プロセスの概要:タンパク質ベースの生物製剤の製造方法
液体を採取した後、バイオ医薬品メーカーは細胞の断片、細胞が作った他のタンパク質、DNAやその他の汚染物質から薬物タンパク質を分離しなければなりません。薬物タンパク質を純粋な形で単離するためには、通常15から20段階の工程が必要です。
「生物製剤は注射するものですから、非常に純度が高くなければなりません。」とアレクセイは言います。錠剤や液体を摂取すると、消化器系が汚染物質の除去を助けます。医薬品が 血流に入ると、もはやそのようなバリアはありません。
また、生物製剤は合成物質に比べて比較的壊れやすいのです。「操作すれば、効力が低下したり、失われたりするかもしれないので、」とアレクセイは付け加えます。「加熱したり、高いpHで処理したり、強いストレスを与えたりしてはいけません。これらの薬を傷つけずに精製するプロセスは、合成薬よりも複雑なのです。」
製造上の課題に対処する方法
ソルベンタムは、スマートマテリアルを使用して工程数を減らし、より信頼性の高い精製工程を作ることで、メーカーを支援します。当社の仕事は、製薬会社が精製プロセスの開発作業に費やす時間を短縮し、最終的にワクチンをより早く患者に届けることに貢献します。
「製品ごとに製造工程が決まっています。」とジョナサンは言います。「私たちの目的は、お客様のためにプロセスを凝縮すること、つまりステップを簡略化し数を減らして臨床試験 をより迅速に進め、最終的には経済的で生産的な製造工程の支援により医薬品を成功させることです。」
When we visit our customers, we get a sense for how our purification products are a part of something that helps improve and save lives.
Jonathan Hester
当社の技術の一つである3M™ Emphaze™ AEX クロマトグラフィーデプスフィルターは、単なるフィルターに代わって細胞の塊や細胞の残骸を除去するものとして開発されました。この装置の開発が始まったとき、科学者たちは可溶性の汚染物質も除去できる1台2役の装置を作ろうと考えました。この浄化装置によって、2つの工程が1つになったのです。この基本技術は現在、精 製プロセスの初期に使用される第二の製品、3M™ ハーベスト RCに拡張されています。細胞よりも小さな孔から液体を注入して押し出すという一般的な方法で除去するのではなく、細胞全体を付着することで、同じ可溶性の汚染物質を穏やかに除去します。優しく付着させることで、必要な圧力を軽減し、細胞の破損を最小限に抑えることで、より多くの内部汚染物質を内部に留めて細胞ごと除去するのです。
精製技術の仕組み
不織布材料(簡単に言えば繊維のマット)は、いくつかのソルベンタム製品の技術の鍵となります。正電荷を帯びたポリマーを不織布にグラフトさせ、フィルターのような働きをし ながら負電荷を帯びた粒子や分子を結合する材料を作ることで、改良しました。通常、目的のタンパク質はプラスに帯電しており、ほとんどの汚染物質はマイナスに帯電しています。
タンパク質製品がフィルターを通過すると、マイナスに帯電した汚染物質(細胞、細胞の塊、DNAのような溶解した汚染物質)が付着します。これにより、フロントエンドでより純度の高い製品を生成し、プロセス全体を通してより一貫した液質を可能にします。
精製プロセスの早い段階でDNAを除去することで、その後の分離プロセスもより効果的になります。これにより、多くのお客様にとって下流の工程がさらに凝縮され、医薬品の収率も向上します。
やりがいのある仕事:すべての人の健康増進に役立つソリューションの設計
工程を減らし、歩留まりを向上させることで、救命につながる治療法が利用しやすくなる可能性があります。さらに、コスト削減にもつながります。
ジョナサンは、新型コロナウイルス感染症によって、病気を抱えた人々がどのような状況に置かれているのか、つまり治癒や治療を待ち望み、希望を抱いているのか、多くの人々が知ることができたと述べています。「このような治療法の開発に取り組んでいることを自覚すれば、グループの全員のモチベーションが上がります」とジョナサン。「当社のバイオ医薬品の顧客は解決すべき困難な問題を抱えていますが、当社の人間中心の科学によって人々の生活をもっと良いものに変えられるのです。」
Through our technology, we can help make the difference from a drug being an academic wonder only, to being able to produce medicine that advances the human condition around the world.
Alexei Voloshin